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なぜ、食品なのか アウトドアウェア会社が食品を販売するとは、一体どういうことか?同じ質問は1968年にも向けられた。登山用の新しい道具を鍛造していた我々が突然、ショートパンツやシャツ、パンツなどを売りはじめたときだ。企業が「その道にとどまる」ことを拒否するときはいつでも懐疑論が高まるようだが、起業家として、私はいたるところにビジネスチャンスを見出している。私はアウトドアの愛好家として、自身が生み出した破壊的な習慣から、人間を含め、我々の故郷である地球とその生物を救う方法を見つけている。 私にとって、プロビジョンズはたんなる投機的事業ではない。それは人間の生存の問題だ。 我々がいまある道を歩みつづける場合の人類の展望について、私は長年警鐘を鳴らしてきた。私がこれを書いているいま経験しているパンデミックは、私に警告をしている。おそらく、釣り、スキー、登山、サーフィンなどをしに世界中を旅するための高価なギアや飛行機のチケットを買う日々は、終わったか、大いに減ることになるかもしれないと。だが食べることは依然として必要としている。実際、可能性があるように思われる唯一の革命は農業にあると考える。そして私はその革命の一部になりたい。 効率と利益を最大化する取り組みにおいて、現代の工業型農業は、年に一度の単作、有毒な除草剤と農薬、合成肥料、無駄な水利用といったものに依存している。そしてこれらすべてにより、復元するよりもはるかに早く表土が破壊されている。国連食糧農業機関(FAO)によると、我々が現在の速度で土壌を劣化させつづけた場合、残される収穫量は60年分ほどだという。たったの60年だ。そのあとは、どうなるのか。 それから、いまこのシステムから食べている食品はどうか。抗生物質と成長ホルモンを摂取した肥育場の牛肉、工場で育てられた鶏肉、淡くて風味のない卵、化学物質に浸された遺伝子組み換え(GMO)作物、そして風味や栄養よりも大きさと生育率が高いものが選ばれる果物。我々は、工業型農業の将来を膨らませる方法は見いだせたとしても、それを実現するには、収益の減少、数百万の小規模農家の失業、有毒化学物質による人間と生態系への危険性の増大、栄養価の低下など、多大な代償を負わなければならない。 『Journal of the American College of Nutrition』に掲載された研究は、過去半世紀にわたって43種類の果物と野菜にみられる主要な栄養素の「信頼性のある減少」を実証した。別の論文は、祖父母の世代が1つのオレンジからだけで得られたビタミンAと同じだけを得るには、人は今日、8つのオレンジを食べる必要があると論証した。『Scientific American』は、これらの調査と同様の調査結果を含む他の調査の報告で、「より健全な農産物への鍵は、より健全な土壌である」と述べている。 当初は善意ではじめた「ビッグ・オーガニック」は、いまや科学技術を通じて食品を増やし、利益率を向上させる方法を模索する大企業に支配されている。聞いたことがあるだろう。それが未来なら、私は言う。まあせいぜい頑張って、水耕栽培のブドウからまともなワインを作ってくれ、と。 私には、我々の優先すべきことは、試みの域から脱したように思える。 幸いなことに、より良い方法がある。リジェネラティブ・オーガニック農法の手法は、より健全な土壌を構築しながら、大きな作物を生み出す。それは、より多くの温室効果ガスを吸収し、減少させる可能性がある。自由に歩きまわるバッファローは、地球で最も優れた炭素固定システムのひとつである大草原を復元する。ロープで養殖されるムール貝は、生育中に海水をきれいにしながら美味なたんぱく質を生み出す。場所を定めた選択的な収穫漁法は、個体数が減少している種に害を与えることなく、真に持続可能な魚の個体群を狙うことができる。これらの例が示すように、袖をまくって食品の世界を掘り下げるほど、最善の方法はしばしば古い方法であることがわかる。偉大な環境保護論者のデイビッド・ブラウワーが教えたように、我々は「一歩踏み出すために振り向く」必要がある。 プロビジョンズを手段として、我々はその方向を変え、新しい種類の未来に向かって踏み出す。地球を枯渇させるのではなく、修復し、風味豊かで栄養価の高い食品で満たされた未来。土壌の健康を構築し、動物の福祉を確実にし、農業従事者を保護する方法で食品が生産されることをたしかにするリジェネラティブ・オーガニック認証が広く適用される未来。要するに、私が話している食品は、問題ではなく、解決策の重要な部分だ。 それが、私が参加したい革命だ。なぜ、パタゴニアは食品を製造し、販売しているのか?私にしてみれば、適切な質問は、どうしてできないことがあるのか?である。事業を成功させるのも人びとの生活を豊かにするのも、必要な条件は同じだということを、私はいままで以上に理解している。つまり重要なのは3つ、食品、水、愛情だ。 イヴォン・シュイナード、パタゴニア創業者
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