いい ちいさな ものづくり
使ってわかる、優しさとあたたかさ。身近な素材から形づくる、かわらまち木工舎の美しい木の道具
ー作り手
今回ご紹介するのは、木工作家のかわらまち木工舎さんです。生まれ育った福島県に工房を構え、カトラリーやプレート、カッティングボードなど台所で使われる木の道具を製作しています。材料は主に福島県産の木材で、間伐材や果樹の木などを使用。「身近に手に入る材料で、長く使えるものを作る、地球に優しいものづくり」をコンセプトに、素材の調達から製作まで全てを一人で行っています。
匙や台所の道具は直接食につながるものなので、安心して使っていただけるように産地の分かるものを使用しています。
どこで育った木なのか、どこで作られた材料なのか、目の届く範囲のものを使い、届けていくことを大切にしているかわらまち木工舎さん。材料に対するこだわりは木材だけではありません。居住地である福島県の中通りは荏胡麻(エゴマ)油を栽培している農家さんが多く、新鮮な食用荏胡麻油が豊富な地域。木工作品にとって欠かせない仕上げに使われるオイルは、80歳を迎える叔母さんが栽培する食用の荏胡麻油を使っているのだそうです。
誰かが触れるものを作る側の責任として、環境にも、使い手にも配慮したものづくりにこだわりを持つかわらまち木工舎さん。木工づくりへの想いについて、お話を伺いました。
ーものがたり
木工に出会ったのは出産をきっかけに子供用の椅子を作った頃のことです。もの作りの楽しさを知り、収納家具や小物などを中心に製作を始めました。その後木のスプーンを作り始め、多様な種類の木材に触れていくうちに木が持つ美しさに魅了されていきました。
道具が役目を終えた後、責任を持って土へと還すことができる。ものを作る側として、木工の製作を選んだ理由の一つです。
木とオイルのみで完成する一本のスプーン。環境に配慮したものづくりができることは、木の道具の製作を始める重要な要因でした。心地よい暮らしの一部としての役目を終えた後、地球を汚さずに土へと還り、そしてまた豊かな材料として自分の元へと循環する。この喜びを作品づくりの源として、本格的に木の道具の製作が始まりました。その後、友人に誘われた展示会をきっかけに「かわらまち木工舎」が誕生。生まれ育った地域の名前が「かわらまち」と呼ばれていたことから、自身の原点である場所の名前を借りて「かわらまち木工舎」と名付けたそうです。
かわらまち木工舎さんの作品は、木の美しさ、形の美しさ、道具としての美しさを考えながら全て手作業で製作しています。水通しとやすり掛けを何度か行うことで毛羽立ちを無くし、表面を滑らかにしてからオイルを塗り、1週間ほどかけて乾燥させていきます。初めたばかりの頃は作り方も決まらずなかなか思うようにいかなかったものの、試行錯誤した結果現在の形に辿り着いたそうです。
ー想い
木のスプーンや道具を安心して長く使っていただくことができるよう、どこで育った木なのか、どこで作られた素材なのか分かる材料を使用しています。そして大切にしていただけるような作品を作り、お届けすることが、地球に優しいものづくりへと繋がると思っています。
使い手にも環境にも優しい木の道具を作るかわらまち木工舎さん。日々の製作に込めた想いは、道具の美しさだけでなく、身近な材料選びのこだわりからも感じ取れます。
同じ種類の材料を使っても一つひとつ表情が異なるところが木の魅力。それぞれの木が持つ本来の美しさを、木の道具という形で伝えていきたいと思っています。
自然が生み出した木の個性を最大限に活かした美しい作品からは温もりが伝わり、ずっと使い続けていきたいと思わせてくれます。温かな食卓の時間をかわらまち木工舎さんの作品と共に過ごしてみませんか。
ー作り手情報
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2022年4月21日