丸底バッグ　有元利夫さんと米津玄師さん〜からのスッと伸びた私だけの心の花

　どちらも好きなアーティストの方々ですが、有元利夫さんは随分若くして亡くなられた。有元利夫さんのファンは多いし、人気があるから、絵を観れば多分わかると思うのだけど、ほぼほぼ遺作と言える「出現」という作品がある（ネットで、「有元利夫」「出現」で検索すると出て来ます）。この作品が発表された時、絵を描く人たちは、有元さんは、次に何を描くだろうとみんな思った（少なくともあるじの周りの絵を描く人たちは）。この絵は、一つのテーマの完成で、次のテーマの誕生への兆しが見える作品だったから、次に何を描くのだろうとみんな思った。でも、その後、大作を描かないまま、「出現」を描いた翌年、肝臓がんで、有元さんは、若くして亡くなられた。有元さんは次を描く体力が残されていなかったのかなぁと思った。で、あるじは、コロナ禍の中、米津玄師さんにどハマりして、ずっと聴いているのだけど、米津さんが「地球儀」を発表した時に、この曲を聴いて、「あれ？この曲、有元さんの『出現』と同じだ」と思ったのです。米津さんの宮崎駿監督へのリスペクトや、ジブリ映画に深く影響を受けていることを知っていたので、「地球儀」を聴いた時、この曲を作るにあたって、米津さんの並々ならぬ想いがあり、力を使い切ったと言う感じを受けたから。「米津さん、次の曲書けるのかなぁ？大丈夫かなぁ？」と思っていた（息子を思う親心です）。で、米津さんのアルバム「LOST CORNER」を購入して、ついでに、『CUT』という米津さんのインタビューが載っている雑誌も購入して、読んでいたら、やっぱりあるじの思った通り「地球儀」は米津さんの今までの集大成というか、一つの大きな山を登りきった作品だったことを知った。そして、「地球儀」の後に生まれたのが「がらくた」で、「壊れていても構いません」と言うフレーズが浮かんだ（この辺かなり省略しています）と書かれていた。「そうきたか」とあるじ。壊れていてもそのまま受け止める、それでもいいんじゃないと言えるってすごいと思った（でも、そういうことで「ふうん」と感心しているあるじはある意味、ちょっとヒマな人かも？と思う。そういうことで感動する還暦のおばちゃんである。ある意味、幸せ者でもある）。でも、「よかった」と思った。何かを創るという作業は楽しいけれど身も削る。削って何もなくなってしまうこともある。でも、米津さんは次が見えたのだなぁと。そして多分、しばらくは、米津さんの創る楽曲を、楽しんで待つことができるのだろうなぁと思った。
　何でこんなことを書いているのかと言うと、私の中で、この３〜４ヶ月たんぽぽシリーズ（勝手にそう名付けています）をずっと製作していて、それと並行して、自分の実生活にも変化があり、プツッと何かが切れた。「これはまずい」と。そこで原点回帰と思い、「ベニテングタケ」のバッグを編み、「これで終わりかなぁ？」と思った時に心に浮かんだのが、ハスの花のような、シロツメクサのような花だった。どこにもない私だけの心の花。その時「あぁ、何とかなる。次が見えた」と思ったのです。その時が、米津さんのアルバムのリリースとシンクロしていて、「不思議なこともあるものだ」と思いながら、プロジェクトペーパーに花の絵を描いて、マス目を刻んで行った。「やっぱり、色糸遊びは楽しい！」と。そして思った。「ニットは一生続けることのひとつなんだなぁ」と。元々、絵を描くことより、色遊びが好きで、絵を描くのはそれほど得意ではない。この、「プロジェクトペーパーに、マス目を刻む」という作業と、素材と相談しながら、色糸を選んで組み合わせて、糸の触感を楽しみながら、コテコテの編み込みのニットをするというのが性に合っている。ただ、別の道もいくつか見えた。「どこまでやろう？」と。とりあえず、「心に浮かんだ私の心の花をどう表現しよう？」と思い、倉庫（私の部屋）へ。色糸はすでにほぼほぼ頭の中で選んでいたので、「ベースをどうしよう？」と探したら、お気に入りのツイードヤーン のソフトドネガルが、2玉（同じロットのものが２玉だけ残っていた）あって、「これにしよう」と。2玉を使い切って作れるバッグのサイズが、この大きさでした。で、葉っぱに野呂英作の段染め糸「くれよん」も使いたかった。2023年にかなりこの「くれよん」を使用してバッグを作ったので、色の出方は分かっていたので、少々もったいなかったけど、好きな色が出るところだけを使って作りました（かなり贅沢な使い方をしています）。編み込み部分（全部で8色）は、スペクトルモデム （廃盤色を含む）と、シェットランドで。とにかく、作りたくて、作りたくて、作ったので、作品に仕立てるだけで満足でした。まず、最初に浮かんだ、白い花を編んでみたら、次に紫系の花が見えた。「あれ？矢車草みたい」と。とりあえず編もうとして、「このバッグは、三段の花の模様にして、白・紫・白の順番にしようと。それに合わせて、「くれよん」の糸をどこを使うか、それに合わせるスペクトルモデム をどうするか見えてきて、夢中になって編みました。　
　編めば満足なので、「ネットにアップしてお気に召した方がいらしたらお譲りしよう！」と。裏地にと浮んだのは、V&Aのジャスミン。硬めの接着芯を貼って形を整えています。持ち手は、お手頃価格のリネンテープ を使って少しお安くしようと。ちょうど、巻きで、リネンテープ を購入していたので、それを二重にして強度を出しています。ただし、縫い目がガタガタです。それも考慮したお値段です。ポッケは二つ。A4サイズのファイルが少し頭を出して入るように持ち手を少し長くしています。このフォルムが自分で言うのもなんだけど可愛いです。相変わらずミシンとお裁縫が苦手な私の腕と、高い材料費を考慮した価格設定です。また、バッグ本体と裏地は、手縫いで縫い合わせています。万が一、解けてしまった場合、お客様の方で縫い合わせ可能だと思いますが、送料はいただきますが、当方での縫い合わせは無料です。また、メンテナンスには可能な限り対応いたしますので、何かございましたら遠慮なくご連絡ください。ただし、故意によるものには対応できません。ご容赦ください。お気に入りの作品に仕上がりました。ちょっとそこまでにも、サブバッグにも良さげです。お散歩バッグにも。秋冬に活躍しそうです。

《使用糸》 ソフトドネガル（イギリス製）　ウール100％
　　　　　スペクトルモデム（廃盤色を含む） ウール100％
　　　　　シェットランド（英国羊毛100％使用）　ウール100％
　　　　　野呂英作　くれよん　ウール100％
《裏地》 V&A　コットン100％　国産
《持ち手》 リネンテープ リネン100％　国産