モヘアの手編みストール　春待ちストール

　2023年秋に、近所のデパートに入っているユザワヤで、ダイヤドミナというモヘアの入ったグリーン系の段染めのウールの糸を発見。見えてきたのは、きつねだった。「よし、きつねのバッグとポーチを編もう」と、40％offで、10玉一袋を購入。家に帰って、きつねの図案をふたつ考え、最初に横向きバージョンのきつねを編み込んでポーチを作ってみた。いい感じ。もうひとつの図案は、きつねが丸くなってうたた寝している図案なのだけど、イマイチきつねらしさが出ない。そもそもストーリーが浮かんでこない。ここで行き詰まり、「よし、気分転換で、ストールを編もう」と、ユザワヤに電話して、同じダイヤドミナを10玉注文しようとしたら、在庫があるとのことで、早速行ってまた40％offで買ってきました。家に帰ってから、ふだん冬に自分が愛用している既製品のストールを出してきて、寸法を測り、自分仕様で、自分で使うつもりで、大きさを調節して簡単に製図をして、ほぼほぼメリヤス編みでストールを編み始めたら、春の霞がかかった草原が見えて、そこから野呂英作の「はなあかりの５番」の糸ににたどり着き、ストールを編むのを途中でやめて置いておいて、「はなあかりの５番」で、レンゲとハコベの丸底ちびちびバッグと、レンゲの丸底でかバッグを編み、そこから、マーガレットのパッチワークバッグを編み、満足して、また、ダイヤドミナのストールに戻ってきた。テクニックの必要のない、考え事をしながらでも作れるようにほぼほぼメリヤス編みのデザインにしたので、「還暦を迎えたらどうするかなぁ？（実は、私、今月、還暦なんです。冷や汗）」と考えながら編んでいた。こんな時、一色だけの糸で編むと、煮詰まって頭の中がグチャグチャになるのもわかっているので、段染め糸にしたのだけど、それで正解だった。色の出具合を楽しみながら、モヘアの感触に満足し、そして「今は小休止だ！」と。
　この5年間、無茶苦茶な日々を過ごしてきた。2019年1月に満州からの引き揚げ者である父が亡くなり、葬儀を終えて帰ってきたら、私に、乳がんの疑いありと知らせが来ていて、2019年3月に乳がんの手術。手術の前日に、ほぼほぼ父の童話を書き上げて、仕上げるために抗がん剤治療はやめて、ホルモン抑制剤の治療のみとし、薬を飲んでいたら、薬の副作用が、関節にきて、注射で少し治まって、乳がんの薬を変えて（時々、ネットショップの新作アップを休んでいたのは、乳がんの薬の副作用のせいで腱鞘炎になっていたからだったのです）、なんとかニットをしながら、童話の内容校正をして、自費出版し、方々にばらまいた結果いろいろあって、どんどん忙しくなって・・・。で、2023年晩夏、なんとか算段がついたので、「還暦を迎えたら、ニットのネットショップをしながら、主人にマネジメントしてもらって、動けるだけ動こう！」と思っていたら、今度は、主人が、厄介な胃の病気になって、二ヶ月で体重8キロ減。食欲がない上に食べてもすぐ下痢をしてしまうので、外食もままならなくなった。いつも月２くらいで楽しみにしていた美味しいスパゲッティのイタリアンのお店にもたびたび行けなくなった。遠出もできなくなった。最初は、「肝心な時に、胃の病気になって、このまま今のペースで行ったら私も主人も潰れる。どうしよう？」と主人に腹を立てても見たけど、よくよく考えて、これは、「無理をする必要はない」と神様がおっしゃっているのだろう、と思った。還暦だからと急がなくてもいい、ちゃんと時は来る。そう確信し、最初の予定では、今年から動くつもりでいたけど、今は休もうと。そして、できるだけ私の負担を減らそうと。100やるつもりでいたことを、5ぐらいに減らそうと。全部やったら身体を壊す、もう無理はやめようと。「よし、それで行こう！」と。
　そうやって頭の中の整理をしながら編んでいたら、モヘアのもふもふ感と、段染めの糸の質感が、あまりにも素晴らしいのに感動して、気分も変わり、自分で使うよりどなたかにお譲りした方が良いだろうと。「これ、自分用じゃなくて、ネットにアップしよう」ということに。そして、頭の中で（ふだんからおバカなことしか考えていない）、白いタートルネックのカシミアのセーターに、編んでいるストールをまとわせて、タータンチェックのスカートを合わせてみたらハコベのバッグが見えた（ベースが同じダイヤドミナのきつねのバッグでも可愛い。今回一緒にネットにアップしています）。「えーっ、超可愛い！」と。「また、ハコベですか？」と言われそうだけど、同じダイヤドミナでハコベのバッグも作ろうと。そうこうしているうちにストールを編み終えて、糸始末をしてアイロンをかけ、でも、まず、きつねのバッグを編んでから、ハコベのバッグを作ることにした。そうして、ストールの値段をどうしようと考えて、最初考えていた値段で主人（今年1月還暦を迎えました）に聞いたら、「そんな安い値段で出すの？だから、手芸品の価値が下がるんだよ」と怒られた。「でも、この糸40％offで買ったし、だいたい他の作家さん見てると、材料費の二倍くらいでみんな出してるよ」と言ったら、「それはプロじゃない」とまた怒られて、「寝る前にそういうややこしい話はしないでよ」とお怒りモードなので（主人は、夜10時になると眠くなる人で、朝5時くらいに起きる。なので、朝、一通りの家事はしておいてくれる。私は寝るのが深夜1時くらいで朝は7時過ぎに起きる。二人とも見た目は若いけどじじとばば。なんのかんのと言っても主人はじじいなので私はじじこと呼んでいます）、考え込んだ。これが、難しい技法で編んでいたら、そこそこの値段をつけるのだけど、縁が、ガーター編みであとはメリヤス編みの超簡単な編み地でしかも自分の頭を整理するために編んだもので、無意識だだ漏れのストール。高い値段はつけられないと。そこで、正規で買った場合と40％offで買った場合の中間を取ることにして、このお値段にしました。とても良い糸なので、自分で言うのもなんですがおすすめです。
　またハコベのバッグもハコベのポーチも、今回一緒にネットにアップします。ハコベのバッグと、このストールをセットアップにしたら、絶対可愛いと思います。もちろんストールだけのご購入でもよし。春待ちストールです。まだまだ寒いけど、春がすぐそばまで来ているような・・・。アレンジもしやすいと思います。洗濯は、自分でしても、クリーニング屋さんに出してもどちらにしても最初のモヘアの感触は損なわれると思います。自分でクリーニングをする場合は、おしゃれ着用の中性洗剤で手洗いで。アイロンを当てる時は、当て布をして低温で。お気に入りの作品に仕上がりました。ただし、私の頭の整理をしながら編んでいたので、糸に私の無意識が染み込んでいるかも？（冷や汗）。

《使用糸》 ダイヤドミナ（国産）　ウール50％　モヘア（キッドモヘア）21％　ナイロン29％