ポーチ（ピンク）　たんぽぽとシークレットガーデンのあるじの会話　あるじの友だちの話

　シークレットガーデンのあるじは、たんぽぽが好き。シークレットガーデン内のたんぽぽ畑でぼーっとしようとやって来ました。たんぽぽたちは、あるじの話すお話が大好き。あるじに「あるじの友だちの話をして」とせがむので、「じゃあ、M君の話をするね」と話し始めました。
　M君は、自閉症という障害を持っています。ひょんなことから、M君とM君のお母さんと友だちになったのは、今から25年ほど前。あるじが当時住んでいた愛知県で。M君が、養護学校を（当時は、特別支援学校のことをそう言っていたと思う）卒業して、就職したのだけど、会社を辞職して、障害者施設に通っていた頃です。M君は、料理を作るのが大好き。とても上手です。ちらし寿司、混ぜご飯、おいなりさん、お赤飯など、なんでも丁寧に作ります。でも、M君にはこだわりがあり、M君のルーティーン通りにしないとパニックになります。手芸もとても上手。あるじは、M君の作った刺し子の座布団カバーをいただいて使っていますが、細かな作業で、しかも目は揃っているし、図案も複雑です。ただ、M君には、刺し子を刺すことはできても、座布団カバーに仕上げることができません。だから、仕上げは学校の先生たちがします。能力はあるので、M君が勤めた会社で、「M君ならサポートをちゃんと受ければ仕事を十分やれるだろう」と、養護学校の先生たちは思っていたし、会社でも、M君を育てたかったのですが、忙しかった。そして小さな下請け会社でノルマもあり、M君のこだわりを大事にする時間もなかったので、うまくいかなくて辞職となったのです。一種のサヴァンかなぁと思っていたのですが、お母さんに聞くと、知的レベルは、地球の子どもの７歳〜８歳くらいとのこと。でも、障害は軽い方なので、会社を辞職してから入所した障害者施設は、M君には物足りなかった。そこで、施設では、料理の得意なM君を調理スタッフに入れてくれました。M君は嬉しくて、野菜を刻んだり、出汁を取ったり、下準備をしていました。そして、施設ではM君のために月一回の「コーヒーショップ」を開くことに。とは言っても、お店を開くわけではありません。施設の中庭のテーブルや椅子の置かれている憩いのスペースに、小さな、人が二人も入ればいっぱいになるプレハブ小屋を建てて、その中で、M君と、スタッフの人でコーヒーを入れて、月に一回お客さんにコーヒーを出すことになったのです。コーヒーといっても、インスタントコーヒー。M君なら、ちゃんとコーヒー豆を挽いてドリップでコーヒーを淹れられますが、そんな予算はないから、インスタントコーヒーです。そしてそのインスタントコーヒーも、その施設の利用者さんの父兄からの寄付です。それでも、ユーモアのあるM君は、インスタントコーヒーの量を、薄め、普通、濃いめと分けて、薄いのは「アメリカン」、普通は「ブレンド」、濃いめは「エスプレッソ」と名付けてお客様に一杯200円で提供します。お客様といっても、ほとんどがその施設の利用者さんの父兄か、私のような、父兄の友だちで、他に誰か知らない人がやってくるわけではありません。そして売り上げも、施設に寄付です。M君のお給料にはなりません。それでも、M君は、「コーヒーショップの日」になると、そのためにお母さんに買ってもらったエプロンをして、「店長」と書いたネームプレートをつけて、自信満々です。最初は、コーヒーを淹れる時に緊張してお湯をこぼしたりしていましたが、やっているうちに上手にできるようになり、お客さんが座って飲んでいるところへ出かけて行き「美味しいですか？僕のコーヒー美味しいですか？」と声をかけます。もちろん、あるじのところには、「コーヒーショップの日」の一週間前に、M君から、「コーヒー飲みに来てください。待ってます」と電話が入ります。あるじの住んでいるところは、そこから結構遠かったのですが、電車一本で乗り換えず行けて、一時間ほど電車に乗って駅で電話すると、M君のお母さんが車で迎えに来てくれるので、用事がある時以外は顔を出していて、M君の成長が見えます。役割があるって自信に繋がるんだなぁと、あるじは思います。M君は、いつもあるじに「混ぜご飯」や「ちらし寿司」、「おいなりさん」などを作って持って来ていて、「あるじと旦那さんと二人で食べてね」とプレゼントしてくれます。あるじは思います。いつか、M君が、ちゃんとした喫茶店で、コーヒー豆を挽いてドリップで淹れて、コーヒーを出して、お給料をもらえる日が来るといいのに、と。
　話を聞いていたたんぽぽたちは「M君ってイケメン？」とあるじに聞くので答えます。「すっごくハンサムなんだよ。パッと見ると、ハンディを持っているように見えないから、逆に苦労したかもね」とあるじ。「M君は今どうしているの？」とたんぽぽたち。「今は、M君も43歳で、お母さんは親亡き後のことを考えて苦労しているよ。相変わらず同じ施設で調理スタッフをして、家のご飯はM君が作ってるよ」と答えると、「M君に会ってみたいなぁ」と、たんぽぽたち。「じゃあ、わたぼうしを名古屋に飛ばせば？君たちの仲間が会うことができるかもよ」とあるじ。M君のエピソードは沢山あって、あるじの宝物です。「また、M君のお話してあげるね。今日はここまでだよ。じゃあね」と、たんぽぽ畑から家に戻るあるじ。
　そしてようやくポーチの話に。前振りが長くてすみません。ベースは、フォッシュ。光沢のあるなめらかな糸です。たんぽぽたちの糸は、多種類の糸を使用（これで費用がかさんでいます）。裏地は、比較的お手頃価格のたんぽぽ柄の生地です。丸底で少し大きめ。ちょっとそこまでにも使えそうです。材料費にそこそこお値段がかかっているのとお裁縫の苦手な私の腕も含めての価格設定です。なんだか、ほっこりして、少し考えさせられるポーチに仕上がりました。ベースが、ダークグレーバージョンのたんぽぽのポーチは、7月にアップします。

中にエアクッションを詰めて撮影しています。

《使用糸》 フォッシュ　コットン40％　レーヨン40％　リネン20％
　　　　　ザンビアプリント （イタリア製）　コットン100％　
　　　　　コットンコナ （廃盤色）　コットン100％　
　　　　　カブレ2005（廃番）　コットン100％　
　　　　　ダイヤコルソ　リネン33％　アクリル35％　レーヨン32％
　　　　　襲（廃番）　絹100％
《裏地》 綿100％　国産
《ファスナー》YKK 国産