ポーチ　きらめく星々（よだかの星からのインスピレーション・ベージュ）

　いいおばさんになった今でも、読むたびに悲しくて涙を浮かべてしまう、宮沢賢治の「よだかの星」。よだかは、みんなからいじめられて、辛くて辛くて宇宙の果てまで飛んで行き、きらめく星になって、よだかは今、幸せでいるだろうか？　今でも、燃え続けているのか？　辛い人生だったね、などと考えているうちに一つのストーリーが浮かんできました。

ーよだかは、宇宙の果てまで飛んで行き、そこで神様に出会い、神様に「もう生きているのが辛いのです。みんな私を醜い醜いと言っていじめるのです。それに餌の虫を殺すのも辛いのです。もう消えてしまいたいのです」と訴えると、神様は、よだかを哀れんで「地球に『シークレットガーデン』という場所があるからそこへお行き。そこのあるじを私はよく知っているからお前のことを話しておくよ。そこは、平和なところだから、そこで生きなさい」そう言われて、半信半疑で、よだかは『シークレットガーデン』へ向かうと、まだ、遠くを飛んでいるよだかを、『シークレットガーデン』のあるじと、動物たちが見つけて「よく来たね。待ってたよ。早くおいでよ」と、大声で手を振っています。よだかは、今までのことを思い、本当に歓迎してくれているのかと疑いながらも、『シークレットガーデン』へ着陸すると、住人たちが集まってきて、「よく来たね。みんなで待ってたよ。疲れただろうから、特製スープでも飲んで、少し休んでね。大丈夫、野菜のスープだよ。出汁は野菜と昆布でとっているよ。虫の出汁でとっていないよ」。よだかは少しホッとして、特製スープをいただきました。なんだか体がぽかぽかして、心が休まります。とりあえず、旅の疲れをとってお休み。みんなに見守られて、「こんなこと、今までなかった」と、少しずつ心がほぐれていくよだか。そうして日々が過ぎていき、よだかはみんなから愛されて、すっかり自信を取り戻し、今では、他の鳥たちと一緒に歌を歌ったり、うさぎやリスたちと遊んだり。『シークレットガーデン』に行くと、元気で愛嬌のあるよだかに会えますよ。おしまい。ー

というお話を作り、この「よだかの星」のバッグを作りたくなり、夜の闇をうまく表現できる糸を探していたら、ありました。野呂英作の「あづみ」。早速4玉購入。でももう一度毛糸売り場に行ったら、編み見本があり、段染めだった。「えー、これで縦糸渡しで編んだら、グラデーションがぐちゃぐちゃになってしまう」と、横糸渡しの違うデザインに変えることにしました。よだかが、絶望して、泣きながら遠く星々のある宇宙へ向かった時の星空のデザインに変えました。ベースは野呂英作の「あづみ」、星々は、現在廃盤の「ペレッテ」という糸と、銀のラメ糸にモールが絡んだ「トッピングモール」の二本どりで。トッピングモールは、ベージュのモールのものと、ブルーのモールのもので。まずは、ポーチから。いい感じ。トッピングモールが、ベージュのものも、ブルーのものもどちらもよくて、バッグは、ベージュのもので丸底バッグを、ブルーのものでペタンコバッグを編みました。11月は、ベージュのトッピングモールのポーチと、丸底バッグを出品します。なんだか神秘的で、本当に宇宙にいるみたい。曜変天目茶碗にも見えます。裏地は、kippisのVarpu（小枝）。凍てつく冬の森のよう。まさに、この作品にぴったり。お気に入りの作品になりました。ウール素材なので、持てる季節が限られるかと思い、材料費に結構かかった割にはお安くご提供することにしました。

中にエアクッションを詰めて撮影しています。

《使用糸》 野呂英作「あづみ」　毛52％　ナイロン25％　絹15％　モヘア8％
　　　　　ペレッテ（廃盤）　毛１００％
　　　　　トッピングモール　アクリル68％　ナイロン32％
《裏地》 kippis 綿100％
《ファスナー》YKK 国産